紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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 ため池を保全し、楽しむ 

 伊勢平野の中ほどに位置する三重県津市のため池を巡ってみて、ため池の環境が少しずつ変化しつつあり、一部は悪化する方向にあると思う。「ため池をめぐる問題」については別のページに書いたが、ここでは、ため池の楽しみについて述べてみたい。

 ため池にはいろいろなタイプがある。筆者が好きなのは、こんなため池である。池の周辺に雑木林があってウグイスなどの小鳥の声が始終聞こえ、アオサギやカワセミが池面を飛び、カイツブリがキュルキュルキュルと鳴いて子育てをしている。また、水面にはコシアキトンボやギンヤンマが飛翔し、岸辺の草木にはシオカラトンボ、ショウジョウトンボ、チョウトンボ、イトトンボ類などの姿が見られる。池の岸近くにヨシなどの抽水植物が生育し、水面にはヒツジグサの花が見える。岸辺には小魚やエビなどが群れ、時々大きなコイが池の中程で水面を跳ねる。

 春になると、岸辺の雑木林のあちこちに山桜が咲き、新緑が萌えて、ため池をつつみ、生命の息吹を感じる。池周辺の雑木林の中の小径は散策ができ、夏には陽のあたる草むらにアオイトトンボ、アジアイトトンボなどが見られ、岸辺のクヌギにはカブトムシやクワガタムがいて、セミが夏を謳歌している。秋になると、岸辺の雑木林が色とりどりに紅葉し、アカトンボが多数飛び交う。

 ため池の背景に山なみが見え、四季ごとに色彩を変化させた山や樹々の蔭が池に映った景観は一段とすばらしい。

 このような光景は、筆者がこれまで津市にある各地のため池を巡って出会ったものだ。1ヵ所の池で全てが満喫できるというわけではないが、このうちのかなりの部分を有するため池もある。

 美しい風景の中で、そこに棲むトンボの種類を知ろうと、デジタルカメラで夢中になって写真を撮り、見ただけでは種類が分からない場合には捕虫網で捕り、検索図鑑と首っ引きになって種名を判定するのも楽しいものだ。種名が分かったら虫を空中に放ってやると、勢いよく飛び去っていく。子供時代に虫取りに熱中した経験があるせいか、このような自然豊かな場所で一心にトンボや鳥などの生物を観察し調べていると、無性に嬉しくなり、幸せな気持ちになってくるから不思議だ。勉学や勤めに疲れた人々の心を癒し、リフレッシュするのに、自然豊かなため池は顧みるべき価値を十分に持っていると思う。

 ため池の自然を楽しんだ後には、その自然や景観を保全したいという気持ちになってくる。ため池の生物の多様性を調べていくと、それぞれの生き物にとって、ため池とその周辺環境がどのようであれば、それぞれの種が保全されるのだろうかという疑問と興味が湧いてくる。1人でも十分に楽しめるが、同好の士が集まって生物相を調べ保全活動をすることも楽しいことだろう。また、子供や孫とと一緒に、素晴らしい里山的な自然の中で、生き物とその生態を学んでいくことも楽しいことだろう。現在と未来に、人々が楽しみを共有する場所を残すために、身近なため池の自然環境を見直し、保全していくことに関心を寄せていこう。(2007.7.10/M.M.)

(写真はムスジイトトンボのオス)
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